海を上がって休憩を取っている時、見知った顔が近づいてきた。
「こんにちは、将臣先輩」
「よぉ」
夏休みに入ってから、こいつ…と良く会う事がある。
「またダイビングですか?」
「まぁな…で、お前は犬の散歩か?」
「はい」
の足元ではちぎれそうなほど勢い良く尻尾を振っている雑種の子犬がいる。
「ははっ、相変わらず懐っこいな」
「普通は男の人苦手な子なんですよ?」
「へぇー、でも俺一度も噛まれた事ないぜ」
仰向けになっている犬の腹を撫でながらそう言うと、も俺の隣に腰を下ろした。
「多分、赤ちゃんの時に将臣先輩の事見てるからじゃないかな」
「…あー、望美のトコで産まれたヤツだったな」
幼馴染の望美が飼っている犬が数匹子犬を産んで、その中の一匹を後輩のが貰っていった。
「だから見覚えがあるんですよ」
「そんなに記憶力いいのか?」
「結構頭いいんですよ?ホープは」
名を呼ばれた犬は視線をに向け、元気良く鳴いた。
「ほら」
「…本当にその名前覚えちまったんだな、こいつ」
「はい!」
ホープと名付けたのは…実は望美だ。
犬を引き取りに来た時、せっかくだから名付け親になって欲しいとこいつは望美に頼んだ。
そこまで聞けば、ただのイイ話ですんだかもしれないが、そこからが最悪だ。
暫くうんうんと唸りながら、望美が思いついた名前は…ホープ。
理由は簡単
自分の名前=望美=望み=hope=ホープ
一瞬言葉を失った俺と譲を無視して、と望美はたった今決まった名前を教え込もうと子犬の名を連呼した…そう、ホープと。
「折角俺がラッシーってつけてやったのにな」
「先輩の場合、犬は全部そうじゃないですか」
「ばぁーか、犬っていやラッシーだろうが」
「そうかなぁ?」
首を傾げるの頭を軽く叩くと、立ち上がり海を眺めた。
「さてっと…もうひと潜りすっかな」
「じゃぁあたしはこれで…」
「おう、気をつけて帰れよ…ホープも、な」
先程と同じように元気良く鳴いた犬は勢い良く起き上がり、砂の上を今にも駆け出しそうな勢いで紐を引っ張っている。
その様子を見ていたら、何故か幼い頃の望美と今はでかくなった望美の愛犬の姿が脳裏に浮かび思わず吹き出す。
「ぶっ…」
確かあいつの場合、この後犬に引っ張られて思い切り砂に突っ込んだんだよな。
まさかそんな事はないだろうと思いつつも、一応に声をかける。
「お前ホープに引っ張られて転ぶなよ?」
「あははっ、さすがにそれは大丈夫ですよ…あ、そうだ!将臣先輩!」
「あ?」
持っていたバッグを探り、そこからが笑顔で俺に向かって何かを投げた。
「…っと」
受け止めた手の平には冷たい感触。ゆっくり開いて見ると、そこにあったのは自販機に入っていただけじゃここまで冷えちゃいないだろうと思える…スポーツドリンク。
「多分、今日も会えるだろうなって思ったから…差し入れです!」
「ははっ、ラッキー。ちょうどノド乾いてたんだ。遠慮なく貰うぜ」
「はーい。それじゃぁ失礼しま…」
「あ」
ペコリと頭を下げた瞬間、口の開いていたバッグから中身がバラバラと砂の上に散乱し、それに驚いたホープが勢い良く駆け出した。
結果…俺の注意は意味を成さず、は砂の上に顔面から突っ込んだ。
「…予想通りかよ」
既視感にも似た感覚を覚えながら、砂をはらっているの方へ歩み寄る。
まさかそんなお前と、あの時代のあんな場所で再会するとは…この時は思ってもみなかった。
連載を終えないと、最後の台詞の意味がわからないんですが…
連載がどぉ〜〜〜〜〜しても書き終わらないけれどお気に入りってことで、この話を持って来てしまいました。
…中途半端にすいません(苦笑)
でも今出さないと、一生表に出してあげられそうになかったのだもの。
現代でもこんな感じで将臣と後輩ヒロインちゃんは案外仲が良かったのです。
ただの先輩、後輩…だったのに、それがあの世界で出会うことにより…変化するのですよ。
とまぁ、そんな話が連載で、書けたらいいな!
…という希望と野望と…色んなものを詰め込んでます(笑)
将臣のあの性格というか…あっさりしてそうなとこが凄い好きです…でもって懐でかいとこも。
ベスト3に入ってます(笑)